確定拠出年金は、国民年金と厚生年金に次ぐ「第3の年金」として国が用意したシステムです。

個人型と企業型が存在し、個人型はiDeCo、企業型はDCという名前で聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

それもそのはず、2022年4月でのiDeCo加入者は234万人。2016年には25万人程度だったため、6年間で加入者は約10倍増えています。

2022年10月から企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和が発表されており、ますます利用者が増えていくでしょう。

しかし、確定拠出年金は受け取り方や運用方法を間違えると税金や手数料が余計にかかり、損をしてしまう可能性が高まります。

そこで今回は、確定拠出年金の移換パターンと、DC導入企業から退職後の流れ、iDeCoへの移換時にかかる手数料について解説します。

老後の年金として賢く積み立てるために、受け取り方や運用方法の理解を深めていきましょう。

確定拠出年金の移換とは?

確定拠出年金の移換とは?

確定拠出年金は、原則60歳になるまで受け取れないシステムです。

たとえ、企業で加入した企業型確定拠出年金(以下、企業型DCと記載)でも退職時には受け取れず、受け取れる年齢まで自身で管理・運用をしなければなりません。

そのため、退職後にはDCからほかの確定拠出年金の制度に資産を移す「移換」の手続きが必要です。

特に、DCで資産運用をしている方は、離転職後すぐに移換しないと損をしてしまうため注意しましょう。

確定拠出年金に関する詳しい内容は次のページで解説しています。

確定拠出年金(401k)とは何?種類やメリット、デメリットを徹底解説

離転職後に必要となる移換のパターン

離転職後に必要となる移換のパターン

離転職後に確定拠出年金を移換するパターンとして、大まかに2種類知っておくとよいでしょう。

  • 企業に再就職するパターン
  • 企業に再就職しないパターン

企業の加入状況や自身の立場によって、確定拠出年金の移換先や加入状況が変わります。

ここでは、再就職する・しないの2パターンで、あなたが企業型と個人型のどちらに移換すればいいのか解説します。

正しい移換先を知るために、自身が当てはまるパターンを確認してみましょう。

1.企業に再就職するパターン

まずは、企業に再就職するパターンです。再就職する場合、企業が企業型DCの制度を導入しているか否かで移換先が変わってきます。

  • 再就職先に「企業型DC」がある場合→「企業型DC」へ移換する
  • 再就職先に「企業型DC」がない場合→「iDeCo」へ移換する

再就職先に「企業型DC」がある場合は、再就職先の「企業型DC」に加入します。

その際に毎月の掛金を設定(勤続年数や所属企業によって変動あり)でき、定額預金や投資信託など運用銘柄を選ぶことが可能です。

企業によってはiDeCoと併用も可能なため、生活費に余裕がある方は掛金の上乗せも検討してみてください。

また、再就職先に「企業型DC」がない場合は「iDeCo」へ移換しましょう。

移換する際には「加入者」または「運用指図者」のいずれかを選択し、掛金の運用します。加入者と運用指図者の違いに関しては以下のとおりです。

  • 加入者:企業型DCの口座に毎月の掛金を入れている人
  • 運用指図者:何らかの理由で掛金を入れられなくなった人(資格損失届を提出する必要あり)

資格損失届を提出して運用指図者になった場合でも、所定の手続きをすれば加入者へ戻れるため、自身の状況に合わせて選んでいきましょう。

2.企業に再就職しないパターン

次に、企業に再就職しないパターンです。再就職しない場合はiDeCoへ移換する必要がありますが、自身の立場によって加入状況が変わってきます。

公務員/専業主婦(夫)/自営業/無職になる場合 「iDeCo」へ移換し、「加入者」または「運用指図者」を選択

それぞれの立場によって掛金が変動する(月額1.2〜6.8万円)

国民年金保険料の納付免除(猶予)制度を利用する場合 「iDeCo」へ移換し、「運用指図者」となる

加入者と運用指図者の違いを簡単におさらいしておきましょう。

  • 加入者:企業型DCの口座に毎月の掛金を入れている人
  • 運用指図者:何らかの理由で掛金を入れられなくなった人(資格損失届を提出する必要あり)

いずれの場合でも、個人型年金であるiDeCoへ移換する必要があります。

掛金に関してはそれぞれの立場によって変動してくるので、記事の後半を確認してみてください。

確定拠出年金を放置しているとどうなる?

確定拠出年金を放置しているとどうなる?

確定拠出年金を移換せずに放置してしまうと、以下の経過をたどって損をしてしまいます。

  • 6ヶ月以上放置すると自動移管される
  • 自動移管されると掛金が目減りする

自動移換と聞いて「自分で手続きしなくていいのは助かる」と思った方は要注意です。

年金受給の時期が遅れてしまうだけでなく、運用していたお金が減ってしまいます。損をしないためにも、確定拠出年金を放置するデメリットを確認しましょう。

6カ月以上放置すると自動移換される

まずは、確定拠出年金の移換を6ヶ月以上放置した場合に起こる「自動移換」について解説します。

自動移換とは、確定拠出年金の加入者資格を失った状態を6ヶ月以上放置し、年金が国民年金基金連合へ移換された状態です。

自動移換になると、さまざまなデメリットが発生します。

  • 自動移換時に手数料がかかる
  • 無利息状態で現金が管理される
  • 運用する銘柄を変更できない
  • 年金の受給開始時期が遅くなる

少しの手間を惜しんだために、せっかく増え始めていた資産が減ってはショックですよね。

自動移換にならないためにも、年金資産を移換する運営管理機関を決めて加入申請を行いましょう。

自動移換されると掛金が目減りする

自動移換されると掛金が目減りしてしまう理由は、自動移換時に手数料がかかるためです。

【自動移換に関する手数料(2019年10月時点)】

  • 特定運営管理機関への移換手数料:3,300円
  • 自動移換に関する事務手数料:1,048円
  • 特定運営管理機関手数料:52円(自動移換されて4ヶ月後から毎月発生)
  • 特定運営管理機関からの移換手数料:1,100円(自動移換後にiDeCoや企業型DCへ移換するときに発生)

たとえば、自動移換してから1年間放置したとしましょう。その後、iDeCoや企業型DCに移換した場合、発生する手数料の合計は5,916円になります。

  • 計算式:3,300円+1,048円+1,100円+468円(52円×9ヶ月分)=5,916円

放置している年数が増えるごとに掛金は目減りしていくため、移換していない方は手続きしましょう。

参考:自動移換|用語集|企業年金連合会

確定拠出年金を導入する企業を退職した後の流れ

確定拠出年金を導入する企業を退職した後の流れ

退職後に企業型DCをiDeCoへ移換する流れとして、3パターンが挙げられます。

  • 公務員になった場合
  • 専業主婦になった場合
  • 自営業者になった場合

それぞれのパターンで掛金は変わりますが、月々積み立てることで老後の蓄えになります。年金受給する年齢になって後悔しないように、iDeCoへ移換するメリットを確認しておきましょう。

1.公務員になった場合

公務員には「共済年金」という独自の被用者年金が用意されていましたが、2015年に厚生年金保険と統合されました。

その際、「職域加算」から「年金払い退職給付」にシフトし、年金額が20,000円から18,000円へ減額されます。公務員にとっては大きな打撃となる改訂です。

そこで、公務員の年金減額分を補うために2017年から、公務員でもiDeCoに加入できるようになりました。

拠出できる掛金の上限は年額14.4万円(月額12,000円)と低い水準となっていますが、安定した収入を得られる職業のため、ある程度リスクをとった運用ができるでしょう。

2.専業主婦(夫)になった場合

専業主婦(夫)で企業型DCをiDeCoへ移換するメリットは以下の3つがあります。

  • 積み立てた掛金に対して全額所得控除が使える
  • 運用益に対して非課税である
  • 60歳以降の受給時に退職所得控除や公的年金等控除が使える

拠出できる掛金の上限は年額27.6万円(月額23,000円)です。

収入がない専業主婦(夫)にとっては満額の掛金を拠出することは難しいかも知れません。

しかし、副業などで得た収益をiDeCoに回せれば、税金面で得をしつつも資産運用が可能となります。

3.自営業者になった場合

会社員とは異なり、自営業者には退職金制度がありません。そのため、自身で老後に向けた積み立てを行う必要があります。

自営業者が拠出できる掛金の上限は年額81.6万円(月額68,000円)と、最も掛金を多くかけられるポジションです。

そのため、国民年金基金や小規模企業共済などと組み合わせれば、控除を受けつつ老後に向けた蓄えとして十分に機能します。

売り上げが十分に立っていて投資に回せる場合は、積極的に資産運用していきましょう。

iDeCoへの移換時にかかる手数料

iDeCoへの移換時にかかる手数料

iDeCoへの移換時にかかる手数料として、2種類挙げられます。

  • 企業型DCに加入していた人がiDeCoへ移換する場合→国民年金基金連合会へ2,829円の手数料を支払う
  • 自動移換後にiDeCoや企業型DCに移換する場合→特定運営管理機関へ1,100円の手数料を支払う

一見すると自動移換後に移換した方が手数料は安く見えますが、自動移換時には別途4,348円の手数料が上乗せされることを忘れてはいけません。

結果、自動移換後にiDeCoへ移換した方が2,619円も多く手数料を支払うことになります。

そのため、手数料を安く済ませたい場合は必ず6ヶ月以内に移換手続きを行いましょう。

参考:iDeCo手数料について|iDeCoをはじめよう|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

退職後は早めに手続きを進めよう

退職後は早めに手続きを進めよう

今回は、確定拠出年金の移換パターンと、DC導入企業から退職後の流れ、iDeCoへの移換時にかかる手数料について解説しました。

退職後に企業型DCをiDeCoへ資産を移換する手続きは自身で行いましょう。

手続きを行わないまま6ヶ月以上放置してしまうと、余計な手数料を取られてしまい資産が目減りしてしまいます。

6ヶ月以内に移換手続きを済ませれば最低限の手数料でiDeCoに移換できるため、運用指図者になる場合でも確実に手続きを行いましょう。

当社サンワプライニングでは「企業型DC」と「iDeCo」のいずれについてもプロの視点から、アドバイスしています。

制度設計や導入だけでなく、運営上の事務手続きもサポート可能です。ご興味がおありでしたら、ぜひお問合せフォームよりご連絡ください。

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